4. モニタリング運用時の5つのポイント
モニタリングをどのように運用していますか?
ここでは、モニタリングの効果を最大限に引き出すためのポイントについて考えていきましょう。
モニタリングは正しい運用なしには十分な効力を発揮しません。そのため、最大限の効果を引き出すための5つのポイントを説明しましょう。
(1)【ポイント①】計画的に実施すること
モニタリングは、ただコールを聞くだけでなく、評価結果をコミュニケーターにフィードバックしてこそ効果が得られるため、プロセス全体を通じた担当者への負荷は小さくありません。そのため、現場管理の片手間に実施するという体制では、日々の業務に追われてどうしても後回しになってしまうことがあります。実際、多くのコールセンターで定期的にモニタリングが実施されない理由はここにあります。
定期的なモニタリング実施のためには、必要な稼働を算出した上で、既定業務として担当者の職責と業務スケジュールに組み込むことが重要です。では、モニタリングに必要な時間の計算方法はどうすればいいのでしょうか。
1人あたりざっと2時間というのが目安です。品質管理専任の担当者がいない場合が、1人あたりの評価に2時間かけるというのはかなり負担が大きいと言えます。
マンパワー不足で適切なタイミングでの実施が難しい場合は、担当者の負荷軽減を検討することが欠かせません。モニタリング業務のアウトソーサーなど第三者の活用も視野に入れて検討すべきです。
さらに、コミュニケーターが自分自身のコールを評価する「セルフモニタリング」も効果が高いのです。他人に評価された結果を見るだけでなく、自らの応対に向き合う機会は気づきも多く、業務への意識向上にも効果があります。ただし、評価のすり合わせなどをしていないため、その結果は人事評価に組み入れず、あくまでも人材育成のひとつの機会として捉えることが大切です。
(2)【ポイント②】継続的に実施すること
比較的、入電数が落ち着いている時期やクレーム増加、新人採用時など、クリティカルなタイミングでの散発的なモニタリング実施は、その時点での状態を把握するという意味において非常に有効です。ところが、理想のコール実現という目的を達成するには、長い時間をかけて課題を一つ一つ解決していかなければなりません。
このため、定期的かつ継続的なモニタリングが欠かせないということになります。一定のインターバルでモニタリングを実施し、課題の発見→修正→チェックというサイクルを繰り返すことで、コールセンター全体のレベルアップが図れるからです。
なお、こうした努力の結果、理想とするレベルが達成できた場合でも、モニタリング活動を停止、減らすことは避けましょう。コールセンターのオペレーションは、「生き物」であり、人員の入れ替えやコール内容の変更などの影響を受けやすい性質を持っているからです。したがって、どのような状態にあっても、最低3カ月程度に1度を目安としてモニタリングを実施し、良い状態にある場合はレベル維持を、課題がある場合は解決に努めることが望ましいのです。
(3)【ポイント③】コミュニケーターに丁寧に説明すること
コールセンターにおけるモニタリングの目的は、コミュニケーターの「あら探し」ではなく、理想のコールを実現することです。したがって、評価を受ける側であるコミュニケーターがマネジメント側の意図と評価項目の内容を十分に理解しなければなりません。
モニタリングは実施する前に、その目的やセンターが(マネジメント側が)目指す理想のコールイメージ、理想のコール実践のために必要なスキルなどを丁寧に説明することが不可欠です。これらが理解されていれば、モニタリングは現場に抵抗なく受け入れられるだけでなく、スキルアップのための貴重な機会としてモチベーションアップにもつながります。
ただし、前述でも触れましたが、評価基準がコールセンターのミッションと矛盾していると、コミュニケーターの混乱を招き、レベルダウンやモチベーションの低下につながりやすいため、注意しなければなりません。
(4)【ポイント④】目的に応じて柔軟に実施すること
モニタリングは、個々人のパフォーマンス評価ですが、全員の結果を俯瞰的に見ることで、センター全体の傾向や課題を把握することができます。そのため、モニタリング実施に際しては、コミュニケーター育成とセンターの品質管理という二つの観点を持つ必要があります。
コミュニケーター個人を評価する場合には、1人につきできれば複数のサンプルを収集し、顧客との相性やコール内容に左右されることなく真の実力を公平に評価することが理想です。評価は前回と比較した成長度やそのコミュニケーターの課題点やなど、個人のスキルにフォーカスします。当然、個々へのフィードバックは必須です。
定期的なモニタリングがどうしても難しい場合は、センター全体の品質を評価に限定して行うことも可能です。その場合は、コミュニケーター全員について複数のサンプルを取って調査する必要はなく、全体の数字や傾向を読むのに十分なサンプルを抽出してモニタリング評価をしましょう。
評価時の視点としては、個別のモニタリング項目にそった評価のみならず、それに合わせて顧客のニーズはどこにあるのか、スクリプトなどに不具合はないか、不足しているスキルや知識はないか、コミュニケーターのモチベーションはどうかなどをチェックします。このような視点で見ると、センター全体の課題が浮き彫りになってきます。その課題に対して、迅速に解決のための施策を講じる必要があるでしょう。
(5)【ポイント⑤】常に顧客視点を保つこと
実際のコールを聞くことで、顧客がその企業に何を求めているか(コールに対する期待値)を意識することも大切です。
顧客の期待値は、コール内容や商品内容、企業ブランドによりさまざまで、例えば、高額商品を取り扱う企業やブランドイメージの高いコールセンターでは全ての分野で高いレベルの対応を求められるのに対し、廉価商品や知名度の低いコールセンターでは、それに応じたレベルの要求に留まってしまいます。
いずれにせよ、顧客が期待する水準を下回ると満足度は急激に低下するため、常に顧客視点を持つことが必須です。