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モニタリング読本(基礎編)

10. ポジションによって異なるモニタリング効果

各ポジションごとにモニタリングを有効活用していますか? コールセンターには、センターマネージャー、品質管理者、スーパーバイザー、コミュニケーターといろいろな立場の人がいます。それぞれの立場でのモニタリング効用を考えていきましょう。

(1) センターマネージャーにとってのモニタリング効用

コールセンター内には各立場の担当者がいて、それぞれモニタリングに対するスタンスや活用方法に違いがあります。モニタリング効果について、具体的に各ポジションへブレイクダウンさせて検証してみましょう。

センターマネージャーは、関係者のうち最も幅広い視野で、コミュニケーター管理からセンター運営まで結果を読みとる必要があります。

センターマネージャーにとってのモニタリング効用

1.センターのビジョン

  • センターの目指す方向に成長できているかの評価

2.企業内でセンターに期待されていることの達成具合

  • コールセンターの位置づけ・役割について顧客が適正に理解しているか

3. 企業/サービスに対する顧客の満足レベルの把握

  • 顧客がその企業/サービスに対してどれだけ満足しているかどうか

4.競合他社との比較

  • 競合他社と比べ自社のサービスがどのレベルにあるかについての理解

他部署との連携/業務フロー/センター内でのオペレーションフローの適切さなどが、モニタリングで検討するべき点です。

センターマネージャーは、現場の最高責任者であると同時に会社とのパイプ役でもあります。従って、センターが一定のオペレーションを実施できているかを管理するだけでは役割を果たせません。センター外をも視野に入れ、企業内でセンターがどのように貢献できるかを常に意識する必要があります。

その一方で、現場のトップとして現場で何が起きているかを常に把握することが大切です。後述する現場管理者のモニタリング効用でも整理しますが、現場管理者としての細かい視点で常に現状をチェックすることも大切で、それによって現場の信頼関係を構築できます。

(2) 品質管理者(QA)にとってのモニタリング効用

最近では、応対品質の管理や教育を専任する品質管理者を設置するセンターが増えています。スーパーバイザーよりも一歩引いた視点でコール品質を管理する立場であるため、モニタリング結果は最も参考にすべき材料となるはずです。また、センター規模が小さい場合などはそれらのポジションを設置することが難しいため、現場をあずかるスーパーバイザーがセンターの品質管理を担うケースも多くあります。

品質管理者にとってのモニタリング効用

1. 応対品質の把握

  • センター全体としての応対品質レベルや特徴の把握

2. コミュニケーターへの個別指導と状態把握

  • フィードバックを通じて、個々のコミュニケーターへの指導やフォローを実施
    ※品質管理者がフィードバックを行う場合で、スーパーバイザーが実施するケースもある

3. チームやスーパーバイザーの適切な評価

  • チーム毎の傾向や、スーパーバイザーの指導力に対する評価

4. 教育・研修の計画や見直し

  • 今後必要となる研修の内容や現場での人材育成の仕方の検討

5. コミュニケーターのモチベーション把握

  • モニタリングを通じて、コミュニケーターのモチベーションレベルや課題を把握

(3)スーパーバイザーにとってのモニタリングの効用

スーパーバイザーもしくは、オペレーションの現場担当者にとっては、モニタリングはなじみ深い作業です。ただし、現場で行っているモニタリングはミスやトラブル、コミュニケーターへの質問に対応するために行っているケースが多いでしょう。

もちろん、それらは必要ですが、合わせてモニタリング結果を品質管理者と共有し、改善にむけて活かすことが大事です。スーパーバイザーがモニタリングから得られるのは以下のような事柄です。

スーパーバイザーにとってのモニタリングの効用

1. センター全体と担当チームの応対品質の把握

  • センター全体と担当チームの応対品質レベルや特徴の把握
  • 個々人のコミュニケーターの品質レベルのチェック、強み・弱み、改善点の洗い出し

2. コミュニケーターへの個別指導と状態把握

  • フィードバックを通じて、個々のコミュニケーターへの指導やフォローを実施
      ※スーパーバイザーがフィードバックを行う場合で、品質管理者が実施するケースもある

3. コミュニケーターとの品質向上への意識共有

  • コミュニケーターと品質向上にむけて意識のすり合わせをする

4. チームおよびコミュニケーターの育成計画を立案

  • 現在のチームやコミュニケーターの育成計画の立案および見直し

5. コミュニケーターのモチベーション把握

  • モニタリングを通じて、コミュニケーターのモチベーションレベルや課題を把握

6. スクリプト等のオペレーションツールの改善

  • 現在のオペレーションツールの問題発見とブラッシュアップ

(4)コミュニケーターにとってのモニタリング効用

一般的に、コミュニケーターにとってのモニタリングとは、あまり前向きな気持ちになれるものではありませんが、適切なモニタリングはコミュニケーターにとっても大きなメリットがあります。

コミュニケーターにとってのモニタリング効用

1. 自らの応対品質の把握と課題の理解

  • 自分の応対に関しての品質レベルや特徴の把握

2. 「お客さま満足」「あるべきコール」の理解

  • センター全体でのめざすべき応対、お客さま満足の得られている応対の具体的な理解

3. 品質向上への理解や意識の向上

  • 客観的に自らの応対と向き合うことにより、品質向上への理解や意識が醸成

4. 品質管理者やスーパーバイザーとの信頼関係の構築

  • 品質管理者やスーパーバイザーとの対話を通じて信頼関係を醸成

5. 品質向上により応対のしやすさやお客さまからのよいフィードバック

  • 品質向上を通じて、会話がしやすい、お客さまから感謝される場面が増加

(5)ポジティブなモニタリング活動

コミュニケーターの中にモニタリングを受け入れにくい傾向があるのは、「アラ探しをされる」とか、「どこが悪いかわからない」「言われていることが理解・納得できない」「人によって注意することが違う」といった気持ちがあります。

こうした感情を払拭するためのキーとなるものは、「具体的な実施の手順」、「明確な評価指標の策定」、「迅速で適切なフィードバックのプロセス」を明示することが必要でしょう。時期を決め予め実施を告知しておけば、現場からの抵抗は和らげることができるはずです。

明確な評価基準で早いタイミングのフィードバックができれば、コミュニケーターは、「自分のコールのどこが具体的に悪いのか」を知り、どこを目指せばよいかが理解できます。また、自分を指導するスーパーバイザーへ信頼を寄せることもできるでしょう。

以上のように、モニタリングはセンター内スタッフへそれぞれの形で貢献するでしょう。また、センター外での活用にもまだまだ大きな可能性を秘めています。もちろんこれは、「なんとなく」実施されてきた従来のモニタリングではなく、シンプルながら精緻化されたステップを踏むモニタリングの実践が前提条件になります。

正しいステップのモニタリング」の実施で、今後コールセンターのクオリティが上がり、企業内での価値がより増進されるのです。

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